「諸宗教の連帯による傷ついた世界への奉仕──コロナ危機とその後における省察と行動を求めるキリスト教の呼びかけ」邦訳版公開にあたって
新型コロナウイルス感染症は、昨年末の発生以来1年を迎えようとしている今もその拡大はとどまるところを知らず、感染者と死亡者の数は増え続けています。ワクチン開発が進んでいるというニュースがある一方で、世界の皆にそれがいつ届くのかは皆目分からず、出口の見えない不安が満ちています。一方でポストコロナへの展望や提言も聞かれるようになり、パンデミックの危機を乗り越えた後の世界へと視点が変わりつつあります。
しかしながら、未だウイズコロナの真っただ中にいる私たちにとっては、まず注視するべきは危機におびやかされている弱い立場の人たちであり、大切なのは来年何をするかではなく、今日何ができるのかを考えることでしょう。
世界教会協議会(WCC)と教皇庁諸宗教対話評議会(PCID)による共同文書であるこの呼びかけは、次のような目的のためです。
イエスは、仕えられるためではなく仕えるために来られました(マタイ20:28)。善いサマリア人の愛と寛大さに倣って、弱い人、弱い立場に置かれた人を支え、苦しむ人を慰め、痛みと苦しみを和らげ、すべての人の尊厳を確保するよう努めましょう。心を広げて対話し、手を広げて連帯し、癒やしと希望に満ちた世界をともに築くことができますように。(17頁「結論」より)
21世紀最初の世界的な危機を乗り越え、亀裂と分断を生み出す排他主義に対抗していくためには、教派や宗教の壁を越えて、神を信じる人たち皆による連帯こそが必要だということを、この呼びかけは力強く語っています。
この呼びかけが、教会で、個人で、グループで読まれ、提案に挙げられている具体的な行動を実践するきっかけになることを願ってやみません。「恐れるな。わたしは民全体に与えられる大きな喜びを告げる。今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった」(ルカ2:10-11a)。クリスマスを1カ月後に迎えるすべての人たちの上に、希望の光が輝くようともに働きましょう。
2020年11月22日
日本カトリック司教協議会 諸宗教部門
責任司教 パウロ酒井俊弘
担当司教 ペトロ中村倫明